2018.01.23

<大学考2018年問題>
私大の生き残り策

プロジェクトデザイン教育の授業で、製品開発に挑む学生たち=石川県野々市市の金沢工業大で

18歳人口の減少は、大学にとって市場縮小を意味する。私立大は教育の質を改革するほか、あの手この手で特色づくりや生き残りに知恵を絞る。独自の教育内容で人気を集める2校を紹介する。

 青々とした芝生で自習に没頭し、校内の廊下では議論を重ねる…。1991年秋、名門の米マサチューセッツ工科大を訪れた金沢工業大(石川県野々市市)の職員は衝撃を受けた。「学生がなんて楽しそうに、熱心に勉強するんだ」

 当時、少子化による大学間競争への危機感から、教職員延べ150人弱が欧米の大学40数校を視察し、ヒントを求めていた。「かつては普通の工業大学だった」(志鷹英男広報課長)が、「自ら考え行動する技術者の育成」を掲げ、教育改革に乗り出した。

 柱に据えたのは「プロジェクトデザイン教育」。学生がチームを組み、問題の発見から現状やニーズの調査、解決まで実践的に学ぶ。例えば「学生食堂の混雑」という課題では「他人と離れて座る傾向があり、席が有効に使われていない」などの原因を探り、机の改良にまで取り組む。「予想外のことに対応しながらプロジェクトを進め、仕事と同じ経験を積める」と担当の松本重男教授(工学教育)。

 教育施設も充実させた。課外活動用の「夢考房」には学生らが自由に使える工作機械や部品を備える。車やロボットなどを自作し、省エネカーの燃費競技会で新記録樹立、ロボットコンテストの世界大会で優勝と成果も出た。24時間対応の自習室も完備した。教育研究にどれだけお金を使い、学生に還元したかを示す教育研究経費比率は2015年度、43・4%で、全国平均35・2%(日本私立学校振興・共済事業団の資料から)を上回る。

 今や「日本一課題が多い大学」として知られ、志願者数は増加傾向だ。学生の活気は増し、企業からも注目されて全国170社と研究連携する。2年生の田口陽大さん(20)は「課題と予習復習が多く、想像以上に大変だが、自分のためになっている」と満足げ。大沢敏学長は「社会人や外国人らが学生と一緒に学べる、社会に開かれた教育にしたい」と前を向いた。

私立の文系大学が苦戦する中、地元を中心に人気を集めるのは名古屋外国語大(愛知県日進市)。全国でも珍しいという必修の少人数の語学クラスは「ネーティブの人と、もっと話したい」との学生の声から生まれた。外国語講師1人に対し、学生数は3、4人。細やかに発音や表現を教え、会話する様子は有料の語学教室のよう。「半年で話す力がすごく伸びた」と学生。

少人数制の授業で、外国語講師(中)と会話をする学生たち。愛知県日進市の名古屋外国語大で

 「留学費用全額支援」制度も人気だ。一定の成績を満たせば全員が欧米や中国、オーストラリアなどに留学でき、昨年は入学定員の4割が海を渡った。満席の自習室で語学を勉強していた1年の小野一真さん(19)は「あきらめずに頑張れば留学できる」と話す。

 キャビンアテンダントなどを志す女子学生のニーズに応えて航空業界との連携授業も充実させ、昨年は80人が同業界に就職内定。国立大の学長も務めた亀山郁夫学長は「時流や学生の要望を見極め、身を切る経営努力で教育に力をいれ、学生のやる気を支えている。私学は素早い改革も可能。国立大が理系にシフトする中、人文系の人材を育てる使命もある」と語る。

 長野県では長野大、諏訪東京理科大がそれぞれ公立化し、志願者数増を図る。利便性の高い都心部のキャンパス整備や、資格志向をとらえた看護系学部の設立など、学生の需要や社会情勢を見ながら全国の私立大で改革が進む。教育研究者の小川洋さん(69)は「真に選ばれる大学になるためには、全国から学生を呼べる特殊な教育プログラムや、地域に根ざして要望に応え地元ファンを増やすことが大切」と指摘した。

 (今村節、芦原千晶)

2018年1月14日付中日新聞朝刊

※「大学考」は中日新聞朝刊・日曜日付にて不定期掲載中です。