2018.06.26

<高校生スタッフが直撃>
大学入学共通テスト作問総括・大杉住子さん

入試改革などについて大杉住子さん(左から2人目)に質問する高校生スタッフ=東京都目黒区で

 センター試験に代わり、2020年度から新しく始まる「大学入学共通テスト」。対象は現在の高校1年生からだが、2、3年生にとっても「浪人したら不利!?」と気が気でない。身につけておくべき力とは。高校生スタッフが共通テストの作問担当者を直撃した。

 訪ねたのは、東京大駒場キャンパスにほど近い大学入試センター(東京都目黒区)。厳重なセキュリティーを施した入り口の先に、科目ごとに試験問題を作るための部屋があるという。

 「ここに全国の大学の先生方が集まり、2年間かけて問題を作っているんです」。教えてくれたのは、同センター審議役で共通テストの作問業務を総括する大杉住子さん(43)だ。

 手元に配られた試行調査(プレテスト)の問題冊子には、スタッフも「今までに見たことがない」と驚く問いが並ぶ。共通テストでは、覚えた知識や解き方の正確さだけでなく、さまざまな場面での思考力や判断力が試されるという。国語と数学では、解答を選択肢から選ぶマーク式に加え、記述式の問題を導入。英語も「読む・聞く・話す・書く」の四技能を測るため、ケンブリッジ英検や英検(新型)、GTECなど全8種の民間の資格・検定試験を活用する仕組みが加わる。

 背景にあるのが、急速に進む社会のグローバル化や人工知能(AI)の進化だ。スマートフォン1つで膨大な情報が簡単に手に入る時代。世界のさまざまな価値観を持つ人々と関わり、未知の問題に直面するようになる中で必要な力とは何か。「ネット検索すれば出てくることをそのまま問うのではなく、それを使って問題を解決していく力を問うことが大切になっている」と説明する。

 作問でこだわっているのが「身に付けた知識を、どのような場面で使えるかを問うこと」と大杉さん。例えば国語の記述式の問題では、部活動の規約文や校内新聞の記事などを基に、生徒会のメンバーが部活動の課題について話し合う場面を設定した。議論の前提となる情報を読み取った上で、課題を改善するためにはどのような提案が必要かを考え、規定の文字数でまとめるという内容だ。

 数学でもプレテストの問題で登場したのは、都道府県別の観光客数と消費総額などのグラフを基に、二人が地域活性化策を考えるといった場面だ。こうした実用的な設定にこだわる根底には、そもそも高校生たちの「この教科をなぜ学ぶのか」「暗記して意味があるのか」という疑問があるという。問題と実社会がどう結び付くのかを示すことで、「その教科をなぜ学ぶのか、なぜ勉強するのかという意味を実感してほしい」と明かした。

 新たな入試を受験する1年生スタッフの一方で、戦々恐々としていたのはセンター試験世代の2、3年生スタッフだ。22年度からは高校教育の基となる「学習指導要領」も改定され、生徒が主体的に学ぶ「アクティブラーニング」が当たり前の時代になる。

 「新しい教育や共通テストを受ける世代との差が心配。社会に出て困らないようにするにはどうしたら?」と尋ねるスタッフに、大杉さんは「日ごろ自分たちが授業で学んでいることが、社会とどうつながっているのかを考えることが大事」とアドバイスした。

 実は最近のセンター試験に、すでに共通テストを先取りしたような問題も出題されているという。そもそも作問のヒントになっているのは、各地の高校で行われている「良い授業」なのだとか。大杉さんは「入試問題は他の先生たちへのメッセージでもある。良質な問題を作ることによって生徒たちが学びたくなるような授業が、もっと広がるきっかけになるといいなと思っています」と話した。

2018年6月10日中日新聞朝刊

※この記事は中日新聞が隔週日曜日に掲載している「マナビバ高校」からの転載です。

※「高校生スタッフ」とは「マナビバ高校」の紙面つくりに協力をしている高校生のことです。