2018.07.19

都市部の私大が難化
2018年大学入試総括

山口大の英語の入試問題。改革の傾向を意識して作問された

今年1~3月に実施された大学入試。志願者数は前年並みだったが、私立大の入試が厳しくなり、浪人が増えたという。その背景や、受験者の動向、入試問題の傾向、今後の展望などを、大手予備校・河合塾(名古屋市千種区)の専門家に総括してもらった。  

「全国的に理系より文系が人気。就職率が堅調な時は幅広い学びをしたいという雰囲気になるからで、ここ3年ほど続いている」と振り返ったのは、河合塾の富沢弘和・教育情報部長。文系でも、経済や情報系の学部の志願者数が増え、逆に、教育や医療などの資格系では減ったという。  特筆すべきは、都市部の大規模な私大の入試が厳しかったこと。「受かると思われたレベルの受験生の不合格が続出した」。受験料の割引やネット出願など受験しやすい仕組みが広がり、私大の延べ志願者数が前年比107%(同塾調べ)と増える一方、合格者数は同96%と減ったという。  大学側が合格者数を絞ったのは、入学者数が定員を大幅に超えないよう是正したからだ。国が教育環境の改善などを求め、定員超過率が高い大学に補助金を交付しなかったり、学部の設置を認めなかったりと、定員管理のルールを厳しくしたことが影響したという。  

 大学によって差はあるが、今年の合格者数は前年比で、上智大84%、早稲田大91%、南山大77%、京都産業大75%など(同塾調べ)。今年の入学定員充足率を99.6%に抑えた南山大は「将来的な学部や学科の再編も見すえた措置」とコメントした。「私大の倍率は、2年前が3.3、昨年が3.6、今年は4.1倍と難化。昨年も浪人生が前年より4%増えたが、今年も同様だろう」と富沢さん。

 一方、国立大については一部難関大で志願者は増えたが、全体としては前年並み。1、2月に京都大や大阪大の過去の入試ミスが明らかになったが、受験直前で志願動向に影響はなかったという。国は先月、入試の問題と解答を原則公開にするルールを定めた。ミスの防止が期待される。  来年の入試は「私大は厳しい傾向が続きそうで、狙う人は幅広い受験を考えた方が良いだろう。一方国立大は今年と同様の傾向。安易に志望校を下げない方がいい」とみる。その後、2020年度の大学入試改革が影響し「改革前の最後の入試を受ける現高校2年生は、浪人を避けようと安全志向が強まり、入試は厳しくなる。1年生は18歳人口が減り始める年代。浪人生も減り緩い入試になるのでは」と予測した。

◆改革の流れ先取りする傾向

 今年の入試問題については「主要科目では、20年度の入試改革の流れを先取りするような傾向が英語で見られた」と河合塾の八木芳久・コンテンツ本部長。改革では、思考力や判断力、表現力や英語の四技能(読む、聞く、書く、話す)を測ることなどが重視されている。  例として挙げたのは2大学の問題だ。筑波大は、英語の文章を参考に、賛成と反対両方の立場の意見を、根拠を示しながら英語でまとめさせる出題で、「課題発見力だけでなく、相手を説得できるような論理構成力や表現力まで問われている」と八木さん。

 山口大は、迷い猫のポスターを題材に、友人同士の対話や猫を発見したとの報告メールを完成させる内容。

「ポスターと会話、メールという三種類の素材で、状況を適切に把握し表現する力に加え、コミュニケーション力も問う良問」。山口大の作成者は「入試改革の新しい傾向を意識した。ただ以前から、聞く力以外の三技能を測る問題になるようにしてきた」と答えた。 年々自由英作文の出題は増えているが「今後も改革の流れをくむ出題はさらに広がりそうだ。受験生は多様なテーマについて自分の意見を他者に伝わるように英語でまとめ文字にする訓練をしてほしい」と八木さんは助言した。

2018年7月15日 中日新聞朝刊