2018.10.23

志望校を決める前に知っておきたい
国公立の大学力

いよいよ受験シーズン!

秋は受験生にとって、志望校を固める大事な時期。国公立大学の現状や入試の動向はどのようになっているか。大学選びに役立つ最新情報を、大手予備校・河合塾教育情報部の富沢弘和さんにお聞きしました。

学校法人河合塾 教育コンテンツ本部 教育情報部 部長
富沢弘和さん

学費、研究施設、就職…
その魅力を知っておこう

国公立大学の魅力といえば、まずは学費の安さが挙げられます。私立は、学部によって差はありますが、初年度納付金は、全体平均で入学料253,461円、授業料877,735円。一方、国立大学の標準額は、入学料282,000円、授業料535,800円。公立大学の平均額も、入学料394,225円、授業料538,294円と、ここは大きなポイントです。(※1) 

学部やカリキュラムの魅力は、都市部はもちろん、地方の国公立大学においても、総合大学と呼べるようなさまざまな分野の学部や学科が揃っていること。特に低学年時の一般教養課程では、学びの選択肢が多く、多様な分野を勉強できるのは、大きな利点といえるでしょう。

また、国公立大学は、大学院への進学率が高いのも特徴です。2017年度の大学院進学率は、全体で私立が5.6%に対して、国立は33.8%、公立は13.3%。(※2)進学率の高さは、学内の研究設備の良さや研究できる環境が整っている証しといえます。特に、理工系学部の研究設備が充実している大学が多いので、将来、理工系の研究職に就きたい学生の方にはお勧めできますね。

就職においても、現在、国公立と私立の就職率はほぼ変わりませんが、景気が悪化するなど社会情勢の影響が出にくいのは、どちらかといえば国公立です。国公立は、もともと地域貢献できるような人材育成をしていますから、地元での就職率は高いですし、長年の実績もあります。地元の公務員、優良企業、病院、学校などに就職したいのであれば、その地域の国公立に入ることが、一番の近道になることもあります。

国公立の強みや特色を
活かすために

現在、少子高齢化やグローバル化が進み、社会の在り方が大きく変わる中で、若い世代が自ら問題を発見し、課題解決していく力が必要とされています。こうした流れの中、日本において、いくつかの大学改革が進んでいます。文部科学省は、国立大学の強みや特色を最大限に活かすために、3つの重点施策枠「地域貢献」「特色ある分野の教育研究」「世界で卓越した教育研究」を設定。2016年度より、国立大学が3つの施策枠のうち選択した1つ分野の成果を運営費交付金額などの評価基準に反映させることをスタート。各大学では、選択した分野での改善や改革、発展を進めています。

近年、国公立の学部再編や新学部の創設が相次いでいますが、前述の大学改革が影響しているといえるでしょう。AIやIoTなどを学べる情報系学部も増えていますが、最も多いのは、「地方創生」を学べる、学部名にも「地域」などが付けられた学部の新設。地域系学部で学べることは、地方自治、社会福祉、観光施策、経済政策、都市デザインなど。地域を研究教育のフィールドとして、地元の自治体や企業と連携しながら、地域の課題解決に向き合える人材育成に力を入れています。

また、国公立の学部再編においては、人文社会系と理工系の学びを融合させた「文理融合」の学部が増えていることも注目すべき点です。現代の複雑化した社会のニーズや問題に対応するのは、もはや文系、理系で物事を考えても解決策は見出せません。従来の学問分野で区切られた教育では、社会をリードする人材を育成できないというのも、相次ぐ学部新設の大きな理由だと思います。

変わる大学入試、
新しい「大学入学共通テスト」へ

入試においては、2018年度の国公立大学の志願者は前年度とほぼ変わらず、来春入試も同様の状況が予測されます。私立の方が、年々少しずつ倍率が上がり、厳しい状況は続くでしょう。ただし、国公立においても、学部・学科別に見ると難易度に変動が見られますので、注意が必要です。

現在、入試改革が進められており、現在の大学入試センター試験に代わって、2021年度入試から新しい「大学入学共通テスト」が導入予定です。大学入学共通テストは、これまで以上に思考力・判断力・表現力を重視した内容になり、国語と数学に記述式問題を導入すること、英語については4技能(読む・聞く・書く・話す)を適切に評価するため民間の資格・検定試験を活用することが決まっています。

新テスト導入の背景となっているのは、文部科学省が提唱する「高大接続改革」です。「高校教育」「大学教育」、それをつなぐ「大学入学者選抜」の一体的な改革で、社会の変化に柔軟に対応できる力をつけるために、それぞれにさまざまな施策が示されています。具体的には、「学力の3要素」(1.知識・技能、2.思考力・判断力・表現力、3.主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)を育成することが重要であり、高校教育で確実に育成し、大学教育でさらなる伸長を図るため、それをつなぐ大学入学者選抜においても3要素を重要視させた一体的な改革になります。

入試改革前でも、
出題傾向には注意が必要

ここ数年は、入試改革の流れを先取りするような傾向の問題が出題されたこともありました。ある学部では、社会的な課題を提示して、その解決策を提案させる問題が出題されましたね。事前に、一般入試においても志望理由書の提出を求める学部も出てくるなど、受験生の主体性を重視する入試が増えています。自分の考えをいかに明確にアウトプットできるかが問われるようになり、状況は変化していますので、自分が志望する大学・学部の入試の動向を把握しておくことは必要です。

このように、現在ではさまざまな改革が行われていますが、決してネガティブに捉える必要はありません。もともと学問とは、知識を蓄えるだけでなく、主体的に考え、他者に伝わるようアウトプットしていく面白いものです。近年、大学の募集要項やパンフレットには、大学が学生に求める具体的な学力とその力を測る評価方法などが明示されるようになりました。それらも読んでしっかり考えた上で、志望校を決めて、受験勉強を頑張っていただきたいですね。

※1 文部科学省「公立大学平成29年度学生納付金調査結果」/「平成28年度私立大学入学者に係る学生納付金調査結果」より
※2 大学院への進学状況(文部科学省「学校基本調査」より河合塾集計)