2018.12.27

<大学考2018年問題>
私立・国立、それぞれのあり方

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 2018年以降、18歳人口の減少が加速し、大学の淘汰(とうた)が必至ともいわれた「2018年問題」。年末に、あらためて私立大、国立大それぞれのあり方について、日本私立大学協会副会長の黒田壽二・金沢工業大学園長(80)と国立大学協会長の山極壽一・京都大学長(66)に語ってもらった。

◆多様な学生、手厚くケア 

 日本私立大学協会副会長 黒田壽二さん

 私は常々、今のままだと私立大600校のうち100校ほどはつぶれると警鐘を鳴らしてきたが、いまだにのんびりしている大学もある。文部科学省も来年度から学校法人の経営指導指標を厳しくする。 

 全入時代は、入試で優秀な学生をとり学力レベルを維持する大学と、誰でもいいから受け入れる大学に二極化し、少子化がさらに進むと閉校する大学も増えてくるでしょう。ただ、企業と違って、明日からやめた、というわけにはいかない。教育機関と自覚し、在校生を最後まで卒業させる責任がある。

 では、変革の時代を生き残るにはどうすればいいか。各私立大が建学の精神に基づき、特徴や特色のある使命を打ち出すことだ。地方なら地域の特性と合っているか。大学の強み、弱みを見極め、どう成長できるか。将来の需給予測もしながら、どんな人材を育てるのか、それに対応する教育をどうすればいいか考え、社会から信頼されることが大切。小手先の学生集めでは生き残れない。  

 大学教育は、先生一人一人が自分の講義をしているだけではバラバラになってしまう。理事会のガバナンス力や教学マネジメント力も大切で、職員と共に、この授業を受けたらこういう能力が身に付くとカリキュラムを系統立て、体系化し、各分野でこのレベルにまで達したら「学位」を授与すると示すべきだ。金沢工業大もシラバス(講義計画)に明記し、試験の成績だけでなく普段の態度も含めて成果を評価して一定水準以上の学生に学位を授けてきた。

 学生の学力不足は、うちでも大きな問題だ。入学直後にどのレベルまで理解できているか全学生を調べ、どこでつまずいているのか、中学レベルから掘り起こして勉強させる。他大学でも実施されているが、大学教育のレベルまで一人一人の学生の質を高めることが大事。非常に手間がかかるが、私立大は国立大よりずっと多様な学生を受け入れておりケアすべきだ。手厚いケアは大学の強みにもなる。 

 少子化の時代、定員は、まず国立大から減らしてほしい。国立大は18歳人口が205万人だった1992年もほぼ同じ定員だった。当時は私立大がどんどん増え、国立大に行けない若者を吸収した。国策として安上がりの教育をしたということだ。今、国立大は自ら定員を減らし質の高い学生を増やすべきではないか。私立大も自助努力で水準を維持するために定員を減らせるところは減らせばいい。

 厳しい時代だが、大学生の4分の3は私立大に所属している。日本を支えているのは私立大ともいえる。国立大は国策でつくられ、国が必要とするところにお金が出ているが、私立大は自分たちでやりたいところに特化して経営している。今後も多様な人材をつくり、国力を維持するという意味で存在意義は増す。多様性や重層性を維持できる高等教育機関として重要な役割を果たしていきたい。

<くろだ・としじ> 1938年福井市生まれ。金沢工業大工学部、日本大法学部卒。学校法人金沢工業大理事長などを経て、92年から学園長・総長。日本私立大学協会副会長、日本私立大学団体連合会副会長、中央教育審議会・大学分科会臨時委員などを務める。
◆地域の未来、支える核に 

国立大学協会会長 山極壽一さん

 少子化問題は、地方創生とリンクしている。地方には国立大が必ずあり、地方の行政官や産業界のリーダーを育成している。若者が都市へ流出する中、少子化に比例して大学を縮小させてはいけない。地方の未来を支えるには、地域の情報や知識の核となり、若者を育てる国立大が必要だ。

 都市や海外から人をひきつける場として機能すべきだ。良い例は、私大だが、大分県別府市の立命館アジア太平洋大。学生の半分が留学生で日本の教育外交と地域の活性につながった。政府が支援し、国立大の留学生の窓口を一本化して魅力を強く発信し、複数の大学を渡り歩くことを義務づければ、地方国立大にも留学生が来て活性化する。

 学部の整理や大学の統合は、強みや魅力が相乗効果で高まるならすればいい。大学の場合、学生が減ったからといって、教員を減らせば、教育内容の多様性が失われる。複雑で不安定な世界で、学生一人一人が揺れ動き考えながら自分の能力に気づいていく過程を支えるにはきめ細かな指導が重要だ。多くの教員と、その教育・研究環境を支える運営費交付金の安定的な配分により、国として若者の基礎学力を保障すべきだ。

 学生の学力低下の原因は入試と就職の仕組みにある。学力が低くても高校を卒業でき、大学も学力が高いからでなく行きたいから入る。新卒一括採用で、有名ブランド大を出たかだけを見る産業界も変わらないと。大学でしっかり学び、卒業後に就活しても立派に就職できる状況になってほしい。企業側が学生の能力を重視して採用すれば学生の意識も変わる。

 研究力の低下が問題になっているが、京都大も交付金が削られ、14年間に200人近い研究者を切った。論文数が減るのは当たり前。短期の競争的資金を取る必要があり、長期的な視野に立った研究ができない。少額でいいから広くばらまいてほしい。iPS細胞の作製成功をはじめ数々の成果も、地道に研究してきた先人達がいたからこそだ。多様な学問分野を温存していくことが未来への投資になる。

 そもそも高等教育の必要性と多様性を政治家も社会ももっと理解してほしい。英国はブレア政権時代、大学の国際性や教育内容をアピールして優秀な学生を集め、大学の自立のために授業料を上げた。日本は何も規制せず大学をつくらせ、私立大は約30年で240校以上増えた。全部悪いとはいわないが、高等教育をきちんと定義せず、いろんな大学を並列させた。

 国立大の法人化は画期的だったが、交付金を減らしてきたことが間違い。多様性が失われた。交付金を増やして自立的な経営を後押ししたら、今さまざまな魅力が生まれ、潤っていただろう。このままでは学生は海外に逃げ、地方大学も疲弊する。官が後押しし産業界が支えないと国立大は自滅していく。それでいいのか。不利益を被るのは日本の学生であり、社会だ。

<やまぎわ・じゅいち> 1952年東京都生まれ。京都大理学部卒。同大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。理学博士。ゴリラ研究の第一人者。京大霊長類研究所助手や理学研究科教授などを経て2014年より京大学長。国立大学協会長、日本学術会議会長など。
2018年12月16日付中日新聞朝刊