2025.11.15

埼大で国際シンポ 教育現場に心のケアを ウクライナの大学教員
訴え 戦禍の子ども
深刻な「悪夢、不安」

ロシアから侵攻を受け続けるウクライナの教育現場の心のケアや危機対応を考える国際シンポジウムが14日、さいたま市の埼玉大で開かれた。来日したポルタワ国立教育大(ウクライナ)の教員たちは「戦争が子どもたちの教育と知能を低下させている。子どもと教員への精神的サポートが必要」と訴えた。(菅原洋)
 「ウクライナでは、500校以上が完全に破壊され、約4千校が深刻な損傷を受けた。計2700人以上の子どもが死亡するか重傷を負い、2万人以上がロシアに強制連行されたという国際機関などの調査もある」

 ポルタワ教育大教授のオリハ・ニコレンコさんと助教で娘のカテリーナさんは交代しながら講演し、危機的な母国の教育現場を報告した。大学のあるポルタワの街はロシア寄りの東部で激戦区に近く、ミサイルなどの攻撃が続き、毎週のように数十人規模の兵士が犠牲になるという。

 2人は「子どもと教員は破壊と犠牲の中で暮らし、電気、ネット、水、暖房など学習に必要な要件を欠いている。子どもは悪夢、不安、抑うつ、社会的孤立など心理的な影響を受けている」と打ち明けた。教員は子どもの不安軽減のため、創作活動や読書を支援し、対話に努めているという。

 シンポは埼大教育機構多文化共修センターが主催し、学生や市民ら計約50人が来場。センター長の野中進副学長が「危機下における教育の持続という社会に重要な問題を考えるよい機会になる」とあいさつした。

 教育大の2人による講演に続き、野中副学長らの協力を得て埼大と教育大のオンライン勉強会を続けるセンターの趙丹寧(ちょうたんねい)・准教授が講演。「教員は極限状況でも知識と成長への強い意欲を感じる。戦争に伴う圧倒的な感情が受け入れられないこともあるが、苦しみの中で日々努力する姿を支えていきたい」と語った。

 文部科学省施設防災担当の係長中森慶さんは、能登半島地震や東日本大震災で現地の教員や子どもの支援に当たった経験などを報告した。

 最後に教育大のヴァシリ・ファザン副学長が「困難な時期でも私たちは日本からの関心と支援を感じ、課題へ立ち向かう希望を与えてもらっている。学生や教員に極めて重要な意義がある」とあいさつ。学術交流協定を結ぶ埼大による協力に感謝し、坂井貴文学長を表彰した。

2025年11月15日 東京新聞朝刊 埼玉版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/449433