2025.08.13

一人を大事にする「性」学んで 独協大で講義
草加・勉強会メンバーら 生理痛のきつさ
疑似体験も

草加市の病院助産師や教職員、市民らが性教育のための勉強会を重ねている。「科学・同意(対等)・多様性・自分ごと」をキーワードに、性の問題を幅広い人権の問題ともとらえた「包括的性教育」を実践する「若芽さ~くる」だ。市内の独協大で行われた講義を聞いた。(大久保謙司)
 講義は7月10日午後、国際教養学部の川村肇教授(教育学)による全学総合講座の一環として行われた。1年生を中心に4年生まで約250人が集まった。

 勉強会メンバーで、NPO「カラフルムーンサイクル~はじめまして生理ちゃん~」代表の山下嶺子さんが、生理の期間や生理痛のつらさには個人差があることを説明した。

 「男性は『関係ない』と思っているかもしれない。でも、あなたのお母さんは女性? お姉さんや妹は? 友人に女性はいる?」

 山下さんは、マッサージに使う低周波治療器を取り出し、本来は患部にあてるパットを男子学生の腹部で作動させた。生理痛に近い苦しさを安全に疑似体験するために行った。「立ってるのがきつい」。学生は困惑した表情を浮かべた。

 山下さんは「生理痛があるときでも授業は止まりません」「満員電車で『生理痛がつらいから座らせて』と言われた人はいますか。多分、なかなかないですよね」と話した。

 次に登壇した勉強会副代表の岡田祥志さんは「性的同意」をテーマにした。具体的な状況を例示して性的同意があると考えられるかを学生に質問した。

 「男性の家に泊まりに来た」「家で一緒にお酒をのんだ」「キスを拒否されなかった」…。岡田さんは、双方が対等な関係でない状況や強制があれば、同意があるとは言えないと強調。相手を尊重するため、会うたびに、確認が必要だと話した。

 講義の終盤、岡田さんは「伝えたいのは『学びのすすめ』」と切り出した。性を学ぶ意味は「自分や他者を大切にすること、誤った情報を科学的に見分ける力をつけること、そして一人一人が大切にされる社会をつくること」であり、「それが一つでも大事にされなければ、一人一人が大事にされない社会が生まれてくる」と結論づけた。

 生理痛を疑似体験した男子学生の1人、外国語学部1年の小沢琉斗さん(22)は「初めて感じる痛み。結構痛かった。これが不定期に来るのはやっかいと思った」と振り返り、「(受講を通して)命のありがたみを感じた」と実感のこもった様子で語った。

2025年8月13日 東京新聞 朝刊 埼玉版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/428269