2025.08.23
学生が見た参院選 専大・山田ゼミ、三重で討論会 SNS戦略「自分の思想を狭める」 外国人政策「排斥反対」「手順を厳しく」
本紙の社会時評「時代を読む」の執筆陣の1人、専修大文学部ジャーナリズム学科(川崎市)の山田健太教授と山田ゼミ3年生10人が7月26、27日、三重県亀山市で合宿した。交流サイト(SNS)が普及し、外国人政策が争点となった7月の参院選をどうみたか。三重の大学院生らを交えて討論会を開いた。(芦原遼、相坂穣)
-各地の選挙戦は?
専大 加藤奏希 横浜駅で国民民主の演説を見たが、200~300人の聴衆が集まり、若者人気がすごかった。
専大 加藤剣 僕は東京・新宿で、れいわの山本太郎代表の演説を見た。歌を歌ってエンターテインメント寄りに見えた。
三重大大学院 羽生岳志 三重選挙区は広いんで、街頭演説よりも、業界、団体を回ることが多い。参政の神谷宗幣代表の第一声をユーチューブで見た。中身がなく実現可能性も疑わしい話に、聴衆がすごいウケている印象を受けた。
-SNSの影響は?
専大 平吹雪羽 目立っていたのは参政。X(旧ツイッター)などで「いいね」などの数が他党よりかなり多く、その影響は若者に対して強かった。
専大 大竹瑞希 SNSで自分が気になる政党を調べたら、もうずっとその政党の情報しか出てこない感じで、自分の思想を狭めていく印象だった。
-「日本人ファースト」を掲げる参政が台頭した。
三重大大学院 中野芙美 日本人のアイデンティティーや権利が失われるという不安があおられている。私は外国人が日本で働いてくれるおかげで生活が回っていると思うので、排斥には絶対反対する。
専大 加藤奏希 昨年1年間、カナダにワーキングホリデーでいた。カナダ人でも仕事を見つけられないほど移民が増えているといい、フランス人も(欧州では)治安が悪くなるから移民反対と言った。自分は外国人を追い出すわけにはいかないけど、少し手順を厳しくする必要があるとは思う。
鈴鹿大大学院 曾兪銘 私は中国出身だが、日本の経済がだんだん悪くなって、自分の権利を守りたい気持ちは分かる。ただ「日本人の権利が失われる」と主張する人もいるが、原因は必ずしも外国人のせいではない。一部の金持ちの外国人が高いお金で部屋を借りて、日本人が追い出される話を聞き、怒る気持ちは分かる。でも、多くは工場や地方の農村で仕事をしている。彼らをもっと見てほしい。怒りは収まると思う。
-報道の役割は?
専大 西山龍成 結構前に、慰安婦問題を取り上げようとした報道機関が政治家からそれを消せと言われて、取り消したという疑惑があった。政治権力にビビってしまうことは続いているのだろうか。
専大 奥村七海 報道は権力の監視役。記者としても批判をしながらも、情報をこっそり聞き出して先んじて報じるために政治家と良い関係を保たないといけないという事情もあるのかもしれない。
鈴鹿大 松下奈美子教授 強い信念を持って、変えなきゃいけないと思った時に大きな影響力があるのは言論報道。もちろんSNS、テクノロジーを駆使して社会を変えてほしいとも思う。オールドメディアとニューメディアみたいな二項対立ではなく、古いものが続いている意味を考えてほしい。
◇その他に専修大から参加した皆さん
増井佑衣、鈴木慧星、千保木愛絵、佐藤一花 (文中敬称略)
みんなできちっと事実確認を
専修大の山田教授の討論まとめ 記者会見がここ15年くらい形骸化し、今参院選でも特定の記者が追い出される問題が起きた。会見は最低限、政治家とメディアが表できちんと対峙(たいじ)する場なので、その力関係や事実がねじ曲げられてはいけない。
私は以前から「日本人ファーストを止めよう」と訴えてきた。日本は社会保障制度も先進諸国では最も差別的なほうだと思う。SNSの時代でも、ファクト(事実)をきちっとみんなで確認して、おかしいことはおかしいと言うようにすべきだ。
2025年8月23日 東京新聞 朝刊 神奈川版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/430405