2025.11.07

明大と和光大生がワインづくり 「川崎ヌーボー」で農業元気に 栽培からラベル作成まで
「若者の力」
即日完売

県内でも都市農業が盛んな地域に数えられる川崎市麻生区岡上、黒川両地区を舞台に、近隣の大学生たちがワインのヌーボー(新酒)を完成させた。華やかなピンク色とフレッシュな味わいが特徴のロゼだ。ブドウの栽培から醸造、ラベルのデザインまで手がけた。「私たち若者が農業に希望を見いだしている姿をアピールできれば」と力を込める。(佐藤圭)
 ワインづくりに取り組んだのは、黒川に農場を持つ明治大と、キャンパスが岡上と隣接する和光大の学生計約20人。明治大は農学部の学生有志でつくる「ワインプロジェクト」のメンバー、和光大は共通教養科目「地域デザイン」の受講生が参加した。

 岡上で「蔵邸ワイナリー」を営む農業生産法人カルナエスト代表取締役の山田貢さん(43)が、学生たちを全面的にサポートした。山田さんが客員研究員を務める明治大の学生たちは、2023年から醸造作業などを手伝ってきた。同じく山田さんが共同研究員の和光大の学生たちも、ワイナリーのイベントに協力。両大が今年5月、麻生区での学生交流の申し合わせを交わしたのを機に、ワインの一貫生産に初めて挑戦した。

 明治大は黒川農場、和光大は山田さんの農場で、日本固有種ブドウ「マスカット・ベーリーA」などを計200株栽培し、ワイナリーの醸造所で計100リットル(750ミリリットルのフルボトルで約130本分)を製造。明治大のワインは「黒川MBAヌーボー2025」、和光大のワインは「岡上ヌーボー2025」と名付けられ、ラベルは両大の学生11人が11様にデザインした。「ブドウ畑を線画で表現」「自然豊かな地域と遠方の都市部の対比を描いた」などのコメントが添えられている。

 明治大4年の井上摘生(つむぎ)さん(21)は「猛暑の中での作業は大変だったが、100%黒川産のオリジナルヌーボーができた。学生の若々しさを感じてもらえるとうれしい」と強調。和光大3年の尾崎沙良さん(21)は「高校で農業を学んだが、ワインづくりは初めて。貴重な体験ができた」と笑顔を見せる。

 学生たちが丹精したワインは今月3日、ワイナリーで開かれたイベントで「解禁」され、グラス1杯500円、375ミリリットルのハーフボトル1本2千円で販売。300人以上が訪れ、即日完売した。近くに住む女性(79)は「とても飲みやすい。若者たちが頑張っているので応援したい」とエールを送った。

 山田さんは「黒川、岡上のテロワール(気候や土壌など土地特有の風土)を表現しようと、学生たちはよく頑張った。農業の活性化に若者の力は不可欠。来年以降も、学生たちのヌーボーを出し続けたい」と話している。

2025年11月7日 東京新聞朝刊 神奈川版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/447580