2025.11.08
蔦重プロデュース
江戸の出版 聖徳大所蔵
狂歌絵本など展示
松戸 歌麿、京伝…べらぼうなユーモア
NHK大河ドラマ「べらぼう」で注目を集めている蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)が出版を手がけた狂歌絵本など、江戸時代の本35点を展示する「本で見る江戸の暮らしと文化-蔦屋重三郎の魅力を探る」が、JR松戸駅東口近くの聖徳大学・企画展示ギャラリー(8号館1階)で開かれている。ユーモアあふれる江戸の出版文化に触れることができる。12月12日まで。(小国智宏)
重三郎は江戸時代中期の版元で、喜多川歌麿や東洲斎写楽などの浮世絵師、山東京伝(さんとうきょうでん)などの人気作家を世に送り出した。展示品はいずれも聖徳大の所蔵で、35点中4点が重三郎が版元となった。
狂歌は和歌の一種で、社会風刺や皮肉をこめたり、古典的な和歌や物語をパロディーにしたもの。重三郎が活躍した時代は、「天明狂歌」と呼ばれる狂歌の黄金期で、たくさんの本が作られた。
喜多川歌麿が絵を手がけた狂歌絵本「潮干(しおひ)のつと」(1789年)は、重三郎のアイデアで、美しい錦絵と狂歌を融合したもので、重三郎の出版物の中でも代表作の一つとなっている。
平安時代の和歌の名人「三十六歌仙」をもじった36人の狂歌師が、貝をテーマに狂歌を寄せた。貝を描くのに雲母の粉末を使っている豪華な作り。見る角度によってキラキラ光ったり、色合いが違って見える。聖徳大には、刷られた時期が異なる2冊の「潮干のつと」が所蔵されており、見比べることができる。
山東京伝が作画し、重三郎が出版に関わった「絵兄弟(えきょうだい)」(94年)は、姿形や雰囲気が似たものを左右に置き「兄弟」として描いている。
「西行法師一代記」(刊行年不明)も重三郎が出版した。表紙がもえぎ色(黄緑に近い色)であったことから、青本と呼ばれたが、時間がたち現在はベージュ色のように変色している。
「塩売文太物語(しおうりぶんたものがたり)」(49年)は、表紙が赤いため赤本と呼ばれており、1部10ページほど。重三郎の版元ではないが、「べらぼう」では、重三郎と花魁(おいらん)・瀬川の思い出の1冊として描かれた。
その他、実在しない鳥や植物をユーモラスに描いた「絵本見立百化鳥(えほんみたてひゃっかちょう)」(55年)、酒と餅菓子を擬人化した物語の「酒餅論(しゅべいろん)」(1661~73年頃)、有名な和歌をもじって狂歌にし「百人一首」風にアレンジした「犬百人一首(いぬひゃくにんいっしゅ)」(69年)など重三郎以外の版元の作品も展示している。
入場無料。日曜と祝日休館。学校行事による休館もある。問い合わせは、聖徳大=電047(365)1111(代)=の図書館事務室へ。
2025年11月8日 東京新聞朝刊 千葉版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/447842