2025.08.27

東京造形大
当時の色彩、欠損部分を復元 ダビンチの思い
精巧に 31日まで
箱根の富士屋ホテルで展示

イタリア・ルネサンス期の巨匠レオナルド・ダビンチ(1452~1519年)の芸術作品を一堂に復元した「ダ・ヴィンチ没後505年『夢の実現』」展が31日まで、箱根町宮ノ下の富士屋ホテルで開かれている。東京造形大学(東京都八王子市)が世界初の試みとして、デジタル技術や最新研究を用いて色彩を再現し、欠損部分も補うなどして、作品をよみがえらせた。展示は国内5カ所目で、県内初。ホテル開催も初めてで、入場無料。国内屈指の歴史を持つホテルで、ダビンチの世界に浸れる。(西岡聖雄)
 名画「モナリザ」で知られるダビンチだが、67年の生涯で残した作品は少なく、現存絵画は16点しかない。うち完成品は4点だけで、ほかは未完成や欠損作品という。東京造形大は没後500年の2019年に池上英洋教授を中心に学生や卒業生ら100人態勢ですべて復元し、各地の美術館などで公開してきた。

 モナリザは、赤外線撮影で確認した下絵に基づき、ツメなどを補った。弟子たちに描かせた派生作品が多い「糸巻きの聖母」も、ダビンチが当初構想した下絵から、背景に細部を加えた。壁画「最後の晩餐(ばんさん)」はキリストの足先などが消失したが、弟子たちの模写作品から完成状態にした。廊下に飾り、横幅8・8メートルの大作を間近に体感できる。

 鋳造直前の青銅が戦乱により大砲製造に回された結果、計画倒れとなった騎馬像も複製した。ダビンチは重量の問題から三つの脚で接地する伝統的なポーズで鋳造しようとしたが、複製作品はダビンチが当初目指した両前脚を上げていななく姿に仕上げ、ダビンチの夢をかなえた。

 同様に実現しなかった大墳墓建設計画も、ダビンチの構想スケッチから完成時を想像できるCG動画と立体模型を制作し、建築家としての一面にも迫った。

 池上教授は「絵画の復元にとどまらず、ダビンチが思い描いていたことを代わりに実現する企画」と説明した。同ホテルの飯田慶総支配人は「箱根観光の学びと感動になれば」と会場を提供した理由を話した。問い合わせは富士屋ホテル=電0460(82)2211=へ。

2025年8月27日 東京新聞 朝刊 神奈川版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/431320