2025.11.09
被爆体験継承へ埼玉大生ら学習会 田中熙巳さん「友人と対話を」 参加の学生「行動起こす第一歩に」
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表委員、田中熙巳(てるみ)さん(93)=新座市=が8日、埼玉大(さいたま市桜区)で、被爆体験の継承をテーマにした学習会に参加した。集まったのは大学生、高校生ら約130人。田中さんは核廃絶や平和外交を訴え、その第一歩として後進たちに求めた。「友人と、本当の話し合いをしてほしい」(杉浦正至)
田中さんは、13歳の時に長崎で被爆した体験を振り返り、一度に大量の市民を殺す核兵器を「戦争兵器とは言えない。使ってはいけない悪魔の道具」と表現。「戦争は絶対にやってはいけない。どんなことがあっても、交渉で解決していくべきだ」と強調した。
被団協が2024年のノーベル平和賞を授与されたことには「若い人が意思を引き継ぎ、核兵器をなくすために世界中で運動をつくっていってほしいと求める意図があった」と解説。その上で「外交交渉の大もとは私たちの日ごろの友人関係、住民関係。いろんなことを自由に話し合って、お互いが納得できるやり方をつくっていくことが本当に大事」と呼びかけた。
参加者からは「核を使わずに国を守るにはどうしたらいいのか」との質問も。田中さんは、どの国も市井の人は戦争を望まず、戦争を主導するのは一部の指導者だとして「そういう人が出てこないようにし、その人の発言が支持されないよう、みんなが話し合って抑えていくこと」と答えた。
参加した社会科教員志望の日本大4年の男子学生(21)は「私たちが被爆者から話を聞ける最後の世代。学校現場でも平和学習の機会をもっと設け、被爆者の方が存命のうちに学ぶことが課題だと思う」と話した。
学習会を企画したのは、埼玉大生と卒業生の有志6人と、同大非常勤講師で県原爆被害者協議会(しらさぎ会)理事の佐々木孝夫さん。学生たちがポスターを作ったり、講義前に宣伝したりして参加者を募った。
2年の田中来夢(らいむ)さん(20)は「魂のこもった話を直接聞くことができるのは今しかない。私たちが記憶、思いを次世代へ語り継いでいく番」と決意。2年の永岡莉奈(まりな)さん(20)は「この会が、考え、行動を起こす第一歩になれば」と期待した。
学生たちは今後も学習会などの活動を続ける考え。2年の砂川凛(りん)さん(20)は「沖縄戦や海外での戦争など、これからも『知りつつ、考える』機会をつくっていきたい」と話した。
2025年11月9日 東京新聞 朝刊 埼玉版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/448022