2023.07.07

神奈川大学サッカー部
高齢者をアシスト

 住民の半数近くを高齢者が占める横浜市緑区の竹山団地。高度成長期に建てられた団地で寮生活をする神奈川大学サッカー部の学生たちとの交流が、高齢住民の暮らしを活気づけている。(森田真奈子)

◆スマホ教室

 「毎朝三時に起きて、団地の周りを約八・五キロ歩いている。歩数をアプリに記録していて、今日もすでに一万五千歩以上ですよ」

 団地内の一室で学生たちが隔週の金曜日に開く「スマホ教室」。四月下旬に参加した住民の高志(たかし)光子さん(84)は、スマホ内のカレンダーへの予定の登録方法を教わりながら、趣味のウオーキングや孫の誕生日などに会話を弾ませていた。

 教室では、学生たちが一対一でスマホの操作やアプリの活用方法を高齢者に丁寧に教えている。

 高志さんはパソコンでのメールを主な連絡手段としていたが、夫がデイサービスに通うようになり、急ぎの連絡に備えて一年前にスマホを買った。それ以後、教室に四~五回参加し「手取り足取り教えてくれて、本当に助かる」と感謝する。

 初めて教室で教えた二年の守屋練太郎さん(19)は「普段は住民と話す機会がないので、交流して感謝もされて楽しい。自分にとっては当たり前のことを相手が分かるように教えるのも達成感がある」と話す。

 竹山団地(約二千四百戸)は一九六九年に着工し、七〇年から入居が始まった。ピーク時に約一万人いた住民は現在約六千五百人。うち三千人が高齢者だ。七十五歳以上の後期高齢者は千六百人に上る。一方、未成年者の住民は約五百五十人にとどまる。

 サッカー部の大森酉三郎(ゆうざぶろう)監督が、学生に社会体験を積ませたいと考え、また、団地から西約三キロに練習場所のグラウンドもあり、入居を決めた。部員は二〇二〇年五月から入居を始め、今は団地の二十室(一室三人)を寮として使う。寮生は約六十人で、部員一人の出費は月六万五千円。食堂は団地内にある商店街の空き店舗だ。

◆清掃 夏祭り 介護体操

 団地での具体的な活動は、住民でつくる竹山連合自治会などと相談した。スマホの使い方教室や清掃のほか、夏祭りを手伝い、今年四月からは食堂スペースで学生らによるカフェや介護体操の教室も始めた。

 カフェで友人とコーヒーを飲んでいた鶴田恵子さん(84)は、スマホ教室に十回ほど参加したことがあり「前に聞いたことを忘れても嫌がらずに教えてくれる。これからはカフェでいつでもスマホのことも聞ける」と満足そう。

 サッカー部の試合結果はLINE(ライン)で送られてくるといい「サッカーは元々興味がなかったが、孫のような学生たちが火を付けてくれた」という。練習試合の観戦も計画しており「遠方に出かけるのは難しいが、近くで楽しみができてうれしい」と話す。

 夫の介護の息抜きにカフェを訪れた女性(86)も「コーヒーが大好き。今までは最寄り駅のカフェに行っていたが、これからはここに通いたい。高齢者同士で話すと介護など暗い話も多いので、若い人と話すのが楽しみ」という。

 竹山連合自治会の吉川勝会長(73)は「祭りなどで高齢者では不安な作業も、学生には安心して任せられる。一緒に動いてくれることで元気を取り戻せるような期待感がある」と話す。

 「スマホ教室も学生が教えなければ人は集まらなかったはず」といい、持続可能な取り組みとなるよう、報酬などの支払いも検討している。「学生の時だけではなく、卒業後も遊びに来てくれるような関係にしたい。将来、再び住んでもらえたら、さらにうれしい」

2023年6月1日 東京新聞朝刊

https://www.tokyo-np.co.jp/article/253750