2024.11.10

旧石器時代~現代
全11冊の大作
鶴ケ島の暮らし
絵本に

◆市出身 伊藤さん 武蔵野美大で卒業制作
 市に寄贈「いろんな世代に読んでほしい」

 鶴ケ島市の暮らしや文化を、10万年以上前の旧石器時代から網羅した絵本「つるがしま物語」が完成し、計35冊が市に寄贈された。市出身で武蔵野美大を卒業した伊藤有沙(ありさ)さん(23)が制作したもので、市は多くの人に手に取ってもらえるよう、市内の小中高校、保育園、図書館、東武東上線駅などに展示する。(加藤木信夫)

 つるがしま物語は今年、名古屋市内のデザイン会社に就職した伊藤さんによる卒業制作の作品。「いろいろな世代に読んでもらいたい」と、温かく親しみのある手描きの絵をふんだんに使い、旧石器時代、江戸、明治・大正、今、これから、など各時代ごとに10冊のカラー絵本(各20ページ)に仕上げた。分厚い資料編を加えると計11冊の大作だ。

 市によると、都心のベッドタウンとして発展した鶴ケ島市は、観光資源に恵まれていないと言われることがあり、伊藤さんも「幼いころから、周囲の人が『何もない』と話すのを耳にしてきた」という。

 「本当に何もないのだろうか」と考え、斉藤芳久市長をはじめ、市ゆかりの10人以上の人にインタビューを重ねた。さらに、市内に残された数々の文献も手当たりしだいに目を通すと、胸が熱くなるような昔の人たちの思いや暮らしぶりがあふれていたという。

 「もともと肥えた土地ではなく、戦中戦後は堆肥にするゴミをもらいに東京まで出かけたといった文献を見つけ、思わず泣いてしまった」と伊藤さん。「今回の絵本を通じて、鶴ケ島に限らず、どのまちにも素晴らしい歴史や熱い思いがあることを感じてもらえれば」と力を込めた。

 10月23日の贈呈式には、伊藤さん、斉藤市長のほか、地元ロータリークラブを通じて地域活性化助成金42万円余りを交付した飯能信用金庫の関係者らも出席。助成金は絵本の製本や増刷、普及促進などの費用に充てられたという。

2024年11月6日 東京新聞朝刊埼玉版