2025.07.19
2025年
戦後80年 「旧陸軍集会所」解体へ 相模女子大の茜館
老朽化著しく 相模原市文化財
図面なく耐震診断できず 地域の交流拠点
新施設に再整備
相模女子大(相模原市南区)は、旧陸軍通信学校の将校集会所として使われていたとされるキャンパス内の茜館(旧第一本部棟)を解体し、地域の交流拠点に再整備する。老朽化が著しく、耐震性など安全面に懸念があるため。風間誠史理事長は「学生や教職員だけでなく、地域の人にも思い出の場所」と惜しみつつ、2026年度末に完成予定の新施設を「学生の学びの場にもしていきたい」と話している。(古川雅和)
正門近くにある茜館は平屋建てで床面積約800平方メートル。フランス式庭園も備える。戦災で校舎や学寮を失った同大の前身・帝国女子専門学校が1946(昭和21)年に東京から移転し、茜館を教室や本部として使ってきた。2008年に事務機能の大半をキャンパス内のマーガレット本館に移した後は、学生の生涯学習の拠点や映画・ドラマのロケ地として活用した。
これまで文化的な価値を尊重して保存してきたものの、屋根がたわみ、雨漏りが続くなど老朽化が目立っていた。建設時の図面がないことから耐震診断もできず、周囲の安全を保てない恐れもあるため、解体を決断。登録有形文化財(建造物)に登録している相模原市も受け入れた。
同大は今月11日、報道陣に内部を公開した。窓枠は戦前のままで、入り口そばの一室のガラスはゆがんでいたり、表面に「帝専」と刻まれたりしている。別の部屋のドアノブは真ちゅう製。ハクビシンのすみかになっていた屋根裏の配線には、白い碍子(がいし)が残されていた。同大は茜館のドアなど一部部材を学内で保管・展示し、相模原市立博物館への寄贈も予定している。建物は10月までに取り壊し、新たな施設を着工する。
2025年7月19日 東京新聞 朝刊 神奈川版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/422128