2025.11.09

川崎発「脱炭素ラーメン」 専修大・田村さん発案
水素エネで調理 「身近な食べ物から感じて」

環境に優しい一杯はいかが-。川崎市で脱炭素に取り組む若者や企業が、ご当地ラーメンを水素エネルギーで調理するプロジェクトを進めている。市の脱炭素モデル地区に指定されている高津区溝口エリアで8日、関連イベントが開かれ、若者たちが活動の成果を披露した。関係者は「脱炭素を身近な問題として考えるきっかけになれば」と期待する。(佐藤圭)
 脱炭素ラーメンを発案したのは、専修大2年の田村奈々さん(19)。学生たちが脱炭素をPRする「まるっとサステナCAMP」に参加。今年6月の初会合で活動内容について話し合った際、ラーメン店でアルバイトをしていた田村さんは「脱炭素を身近に感じてもらうには、身近な食べ物がいいのでは」と提案した。

 会合に同席していた市職員らが「麺をゆでるエネルギーをガスから水素に置き換えれば、二酸化炭素(CO2)を排出せずにラーメンが作れるのでは」と着目。水素製造装置などを手がける地元企業「三菱化工機」(川崎区)と、川崎を中心に展開するラーメン店「元祖ニュータンタンメン本舗」に協力を依頼し、脱炭素ラーメンが実現した。

 「水素ノー炭炭(たんたん)メン」と名付けられ、元祖のロゴマークをアレンジした新ロゴも制作した。調理は、三菱化工機などが共同開発したシステムを使用。野外のイベントで提供する場合、水素をためたタンクを会場に運び、燃料電池を活用して電力を供給する。

 田村さんは先月、脱炭素ラーメンを試食した。「まさか形になるとは思わなかった。具体化に向けて動いてくれた人たちに感謝したい」と笑顔を見せる。

 脱炭素関連イベント「まるっとサステナフェスティバル」は溝口駅前の歩行者空間「キラリデッキ」を会場に、67企業・団体が参加。会場などの都合で脱炭素ラーメンは振る舞われなかったが、田村さんらが出展ブースでプロジェクトを説明した。今後、市のイベントなどで提供する予定。

 「まるっと」に参加して以降、「マイボトルを持参するようになった」と田村さん。「脱炭素は国がやるものだと思っていたが、個人でもできることがたくさんある。小さな積み重ねが削減につながる」

【用語解説】
まるっとサステナCAMP
 川崎市高津区溝口エリアでCO2削減に取り組むプロジェクト「脱炭素アクションみぞのくち」をPRする目的で市が2023年度に創設。大学生ら若者世代の「インターン」で構成され、3期目の本年度は約20人がメンター(助言者)の専門家とともに活動している。

2025年11月9日 東京新聞朝刊 神奈川版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/448009