2025.11.19
日本支配下の紙芝居
読み解く 神奈川大
23日に公開研究会 植民地・占領地
台湾、インドネシアの専門家講演
神奈川大学(神大)は23日に「『帝国』の紙芝居」をテーマに公開研究会を横浜市神奈川区の横浜キャンパスで開く。太平洋戦争中、大日本帝国の支配下にあった台湾とインドネシアでは国内と同様に、国策紙芝居が上演されていた。紙芝居というメディアを通じて戦争協力のプロパガンダが現地でどのように展開されたのか、両国の研究者が報告する。入場無料で市民の参加を歓迎している。(阿部博行)
研究会は神大「非文字資料研究センター戦時下国策紙芝居と大衆メディアの研究班」が主催する。リーダーの新垣夢乃准教授(国際日本学部)は公開の狙いを「国内で知る機会が少ない台湾やインドネシアの紙芝居研究の現状を広く知ってもらい、日本が戦争の正当性を現地の特性を反映させながら、どのような言葉で人々に伝えたのかといったことにも触れていただければと考えている」と話す。
台湾は1945年8月の終戦まで約50年間、日本の植民地とされ、戦時中は、日本語と台湾語の両方で書かれた紙芝居が学校や工場、映画が届かない農村や山村でも上演された。制作に携わったのは、日本語教師や台湾総督府の日本人職員などで、内容は産業への貢献や節約、うわさ話をやめるよう諭すものなど「銃後(非戦闘地域)の協力を促す作品が多かった」とされる。
台湾では200点以上が制作されたが、現存が確認されているのは「曙の母」など二十数点にとどまる。日本国内にも2作品あり、その一つの「山の香り」はクスノキから作る樟脳(しょうのう)の増産を奨励する物語で、同センターが所蔵する。
インドネシアは42年から約3年半、日本の占領下にあり、紙芝居も制作されたが、現地に実物は残っていないとみられる。旧宗主国のオランダが戦後、複数の作品の一部を本国に持ち帰り、アムステルダムのNIOD(オランダ戦争資料研究所)に所蔵している。その中の「がんばり先生」という作品は、地元の教師が日本軍政下で厳しい軍事訓練を受ける話が描かれている。
研究会では、台湾の国立屏東大学応用日語学系の傅玉香(フユンシャン)副教授が「戦時期台湾の紙芝居制作と演出」と題して登壇。インドネシアからは国立ハサヌディン大学日本文学科のフィティヤニ・アンワル助教授が「紙芝居と日本占領下のインドネシア」と題して講演する。会場では両国の紙芝居のパネル展示も行われる。
神大の非文字資料研究センターは2008年4月に設立された。国内では1000点から1500点の国策紙芝居が制作されたと言われ、同センターは約900点の存在を確認し、約300点を所蔵している。今後は朝鮮半島やマレーシア、シンガポールなどアジア諸国の研究者と連携を深めていきたいとしている。
研究会は神奈川区六角橋の神大横浜キャンパス8号館21室で午後2時開会。問い合わせは同センター=電045(481)5661=へ。
2025年11月19日 東京新聞朝刊 神奈川版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/450216