2020.05.20

ウオークスルー検査対応
隔離ブース
安く、早く、簡単に

的場さん(左)と荒川さん(中)が協力して作った隔離ブース。右は鹿野院長=三芳町のふじみの救急クリニックで

新型コロナウイルスのPCR検査に役立ててもらおうと、ものつくり大(行田市)の的場やすし客員教授(56)が春日部市の企業と協力し、ウオークスルー方式に対応した隔離ブースを考案した。「安く、早く、簡単に」が売りのアイデアグッズで、県内外の医療現場に無償提供している。(近藤統義)

 ウオークスルー検査は、医療スタッフが隔離ブース内から腕を出し、歩いてきた患者から検体を採取する仕組み。感染リスクを抑えられるとして各地で導入が進むが、一台百万円と高額なブースもある。

 それに比べ、的場さんが考えたものは安上がりだ。材料はキャンプ用テントに角材、透明なビニールシートや送風機など。ホームセンターや通販で計五万円ほどで手に入る。

 作り方はこうだ。まずテント横幕の一面に、角材で組み立てたフレームを取り付ける。フレーム内の横幕を切り取り、代わりにビニールシートを張る。シートに腕を出すための穴を開け、ゴム手袋を装着する。

 さらに送風機でテント内に風を送り込み、外部より気圧を高くする。患者の飛沫(ひまつ)を含んだ空気が内部に入らないようにするためだ。約三時間で設営でき、「日曜大工の感覚で作れますよ」と的場さん。

 開発のきっかけは、韓国がいち早く実施したウオークスルー検査をニュースで目にしたことだった。「もっと簡単に隔離ブースができたら、日本でも需要があるのでは」と直感した。

 四月初め、土木工事の資材を扱う「サポートマーケティングサービス」(春日部市)の荒川真一社長(50)に別の仕事の際に相談すると、「うちにちょうどいいテントがあるよ」。翌日、他の材料も買いそろえて試作した。

 荒川さんは、さらにテント十張りを用意。被災地支援を社業の一つとし、「コロナ禍は災害と同じ」との思いからだ。製作の様子を動画で公開すると注文が相次ぎ、神奈川と山口県の病院に納入した。

 十八日には、二十四時間態勢で検査を行う「ふじみの救急クリニック」(三芳町)にも設営。ブース内に冷房機も取り付け、鹿野晃院長(47)は「検査スタッフの熱中症対策には渡りに船だ」と喜んだ。

 ただ、専門的な検証はしておらず、テントの気密性などに課題は残る。的場さんは「医師らのチェックを受けながら改良を重ねたい。動画を参考に、各地でより良いものを作ってほしい」と話している。

 動画はユーチューブで「的場やすし PCR検査用テント」で検索。問い合わせは同社=電048(711)6867=へ。

2020年5月20日付 東京新聞