2025.02.19

「翔んで埼玉」と真逆
ふさげたことをまじめに
学術的に迫った県ガイド本
井坂教授が責任編集、出版

◆川と地形探究、国道16号の考察
 東京に隣接し、人口700万人を超えながら「ダサい」などと言われ、その姿が謎に包まれてきた埼玉県-。ちょっと大げさかもしれないが、そんな県の実像に学術的に迫った教養本「大学的埼玉ガイド-こだわりの歩き方」が出版された。県内外の26人の有識者が歴史や文化、イメージの側面から易しく案内する。(藤原哲也)

 内容は3部構成で川と地形を探求しながら、そこに生まれた歴史や文化をたどる「地勢学」や、首都圏の巨大マーケットの中で発展した産業集積の特徴、独特の県民性や住みやすさなどに迫った。行田市のものつくり大教養教育センターの井坂康志教授(52)が責任編集を務めた。

 出版のきっかけは井坂教授が2023年から大学のウェブマガジンで連載する「埼玉学」のコラム。さまざまな視点で埼玉の魅力を再発見し、井坂教授が面識のある大学教授などに執筆を依頼してまとまったという。井坂教授は「歴史一つとっても、普段意識しない部分が浮き上がって見えてくるような構成にできたらと考えた」と振り返る。

 例えば井坂教授が取材したハムやソーセージが人気の日高市の「サイボク」は、日本の戦後復興の歴史とともに農業生産が盛んな地の利を背景に発展した。また、2000年代後半に誕生した越谷レイクタウンは治水機能を兼ね備えており、「自然と歴史と人がうまく融合し合った埼玉らしいエリア」と解説する。

 その他に首都圏の環状道路として県内でも道沿いが大きく発展した国道16号の考察や、昨年新1万円札の肖像となった渋沢栄一の偉業紹介、大ヒットした映画「翔(と)んで埼玉」シリーズの武内英樹監督へのインタビュー、県内メディアの歴史や役割とともにテレビ埼玉やNACK5の社長や会長に話を聞いたページもある。

 井坂教授は国内で人口減少が進み、経済的な力が落ちている局面において「中庸で分をわきまえている部分など、日本は埼玉から学ぶ部分がたくさんあると思う」と指摘。その上で「この本は『翔んで埼玉』と真逆で、ふざけたことをどこまでまじめに取り上げるのかが一つのポイントだった。その精神は映画とそれほど変わらないと思うので、楽しんで手に取ってほしい」と呼びかける。

 本は昭和堂発行。A5判、336ページで、税込み2750円。県内の主要な書店などで販売している。

2025年2月14日 東京新聞朝刊埼玉版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/385756