2020.07.22
オープンキャンパスをクローズ(閉じても身近)に
知恵絞る大学
新型コロナウイルスの影響で、多くの大学が今夏のオープンキャンパス(OC)を中止にしている。受験生にとっては模擬授業や学生との交流など、進路決定の重要な機会になるだけに、各大学はインターネット上での動画配信や双方向型相談会の実施など代替手段に力を入れる。
「決して近大には来ないでください」。近畿大(大阪)がホームページ(HP)上に載せた異例の呼び掛けだ。今回、OCの代わりに企画したのが、オンラインの「CLOSE CAMPUS(クローズキャンパス)」。CLOSEには「大学は開いていないが、身近に感じてほしい」との願いを込めた。
学部紹介や講義の動画のほか、遠隔操作で声や動きを伝えることができる分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を参加者が操り、現地にいる学生と会話しながらキャンパス内を回る企画も。担当者は「オンラインでも距離を縮めることができたら」と期待を寄せる。
明治大(東京)は多い年で6万人以上が夏のOCに参加してきたが、今年はビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使った相談会などを展開。例年8月に2万5000人超の参加者を集めていた立命館大(京都)も、今年はHPの特設サイト上でOCを行う。
国立大でも、大阪大や九州大(福岡)が動画配信などを行う予定で、コロナ禍によるオンライン化が、授業だけでなく大学選びの場にも及ぶ。
「オンラインだと、遠方や海外の在住者が参加してくれている」。関西地方のある私立大の担当者も手応えを口にするが、「実際に見てもらわないと分からない面があり、町の雰囲気を知りたいという声も聞く」とも。大学の中には、感染対策を講じた上で、対面の説明会や少人数でのOCを開催する例もある。
大学受験に詳しい教育情報会社「大学通信」の安田賢治常務は「今年はOCだけでなく、合同説明会も中止になっており、受験生が大学を知る機会が失われている」と指摘。オンラインでは大学側の一方的な情報発信になりがちだとして「百聞は一見にしかず。多くの大学が対面授業を再開する予定の秋以降に、キャンパスに足を運ぶ機会をつくるのがいいのでは」とアドバイスしている。
2020年7月18日付 東京新聞夕刊