2025.06.07
参院選2025 消費税どうする?
学生白熱 日本女子大でディベート 維持
穴埋めで増税…物価上昇に 廃止
困窮者支援…経済にプラス 東葛高教諭、「未来の先生を育てる」指導
消費税は廃止? それとも維持する? 夏の参院選を前に、野党を中心に消費税減税を主張する声が高まる中、日本女子大(東京都文京区)で学生たちが廃止に賛成、反対の立場に分かれてディベートで意見を戦わせた。柏市の東葛飾高教諭で同大非常勤講師を務める内久根直樹さんが企画。学生たちは賛成、反対それぞれの立場から利点を主張し、課題をあぶり出した。(林容史)
東葛飾高で地歴公民科を担当する内久根さんは、同大では教職を志す学生たちを教えている。ディベートは、自ら主体的に考える“アクティブ・ラーニング”が求められる教育現場で活躍できる人材を育てるのが目的。5月24日に開き、3、4年生計26人が参加した。
先攻は、消費税廃止に賛成するチーム。学生は、食料品や生活必需品に課される消費税に「収入の少ない人ほど負担が重くなる逆進性の問題がある」と指摘し、「物価高騰で、廃止されれば困窮世帯への支援になり、経済にもプラスに働く」と主張した。「2年間の時限的措置で、この間に経済を立て直し、格差を是正する」と論じた。
これに対し、廃止に反対するチームの学生は「税に頼る超少子高齢社会の日本にとって、廃止は最適な手段なのか」と首をかしげた。消費税を2年間、廃止すれば約46兆円の税収減になるとし、「穴埋めに国債発行の増額、所得税や法人税などの増税が必要になるが、国民負担が大きく、物価上昇を招くため不可能だ」と断じた。
廃止賛成チームは「今の物価高は、賃金が上がるのを待っていられないほど深刻な状況。このまま何もしなければ消費は落ち込み、経済も悪化する負のスパイラルに陥ってしまう」と警鐘を鳴らす。
廃止反対チームは「社会保障費に充てる消費税がなくなれば、医療費が増える半面、教育にかけるお金を減らさざるを得ない。次の世代の格差が広がるのでは」と将来の不安を訴えた。
議論を聞いた学生3人が話し合った結果、反対チームに軍配が上がった。判定した教育学科3年の市村咲希さん(20)は「廃止の成功例が少なく、危険度は高いのかなと感じた。明確な実現の可能性が示されておらず、消費税が実際に、どのように使われているのか説明も必要では」と注文をつけた。
議論した史学科3年の斎藤有梨さん(20)はグループLINEでチームの意見をまとめ、人工知能(AI)も使って相手側の反論を予想したという。「準備して臨んだのに、十分に意見が伝えられたかどうか」と反省も。「調べるだけでなく自分の言葉で主張することが大切」と実感していた。
教育学科3年の岩﨑紀佳さん(20)は「国の減収の大きさを考えれば減税は難しさもある。だからこそ、みんなが豊かに暮らすにはどうすればいいか話し合いたい」と力を込めた。
内久根さんは「税金を通して社会のあり方を自分事として考える授業になった。学生たちは普段あまり見ないニュース番組を見て、選挙について考えていた。未来の先生たちには、自分事として社会を考えられる子どもたちを育ててほしい」と願っていた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/410165
2025年6月7日 東京新聞 朝刊 千葉版