2025.07.07
TOKYO発 「学習院ミュージアム」装い新た 皇室・華族の歴史
目前に
皇室や旧華族ゆかりの史料を多く収蔵する学習院大学史料館(豊島区)が目白キャンパス内で移転し、「霞(かすみ)会館記念 学習院ミュージアム」としてリニューアルした。戦後日本を代表する建築家・前川国男が図書館として設計した建物が改修され、新たな歴史を刻み始めた。
学習院大学史料館は1975年、明治時代に建てられた木造平屋の「北別館」(国登録有形文化財)に設けられた。その後、大正時代に建設され、昭和天皇の弟・秩父宮さまらが使った木造2階建ての旧皇族寮「東別館」(同)など歴史ある建物も史料館として活用されてきた。
華族の子弟の教育機関として1877年に設立された学習院。84年から宮内省管轄の官立学校となり、1926年に制定された皇族就学令で皇族の進学先とされた。同令は戦後に廃止されたが、上皇さま、天皇陛下、秋篠宮さまをはじめ、多くの皇族方が学ばれた。
こうした経緯を踏まえ、学習院ミュージアム学芸員の長佐古美奈子さんは「『学習院といえば皇室、華族』というイメージがある」と指摘。史料館では、皇族の慶事の際に配られる菓子器「ボンボニエール」や、高松宮妃喜久子さまが昭和初期の渡欧時に着用したビーズドレスなど、皇室や旧華族、学習院にちなんだ品々をはじめ、史料計約25万点を収蔵している。
史料館主催の展覧会で皇室をテーマとすることも多く、来場者数が1万人を超えることも。展示室が手狭という事情もあり、移転することになった。その行き先は、日本のモダニズム建築の先駆者として知られる前川国男が設計した大学図書館が入っていた建物。改修が施され、外観は打ち放しコンクリートに復元された。
3月にリニューアルオープンした学習院ミュージアムは1階に「常設展示室」と、企画展などを開く「特別展示室」を設置。合わせてテニスコート1面分ほどの広さで、展示スペースだけで従来の3倍近くに拡大した。温湿度調節機能を備えた収蔵庫も整備した。
常設展示室では、国内で初めて導入されて昭和天皇も着用された学校制服の縮小模型、高松宮さまが学習院初等学科まで使ったランドセルの復元模型、学習院第10代院長を務めた乃木希典の愛馬の骨格標本などを展示している。
特別展示室では企画展を開催。6月下旬から開かれている「芸術と伝統文化のパトロネージュ2(ローマ数字の2)-まだまだ開く玉手箱-」では昭和の大礼に際して制作され、宮内省から学習院に移管された夏用装束と付属の冠などが展示されている。
さかのぼって、3月に行われた開館セレモニーでは同大卒業生で三笠宮家の彬子さまらがテープカット。遠藤久夫学長は「学生、一般の方にも足を運んでいただき、学習院関係の文化財とその調査研究の成果を発信する場となることを期待している」と語った。
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企画展は8月2日まで。開館日・時間は学習院ミュージアムのウェブサイト参照。問い合わせは電03(5992)1173へ。
文・山口登史/写真・須藤英治、潟沼義樹、山口登史/紙面構成・加藤大介
2025年7月7日 東京新聞 朝刊 東京発
https://www.tokyo-np.co.jp/article/417672