2025.07.09
2025年
戦後80年 文京学院大生がパネル展 ふじみ野の文化施設 旧陸軍
火工廠の歴史
知って トークショーや陶製手りゅう弾展示も
戦時中、現在のふじみ野市中心部にあった旧陸軍の弾薬工場「東京第一陸軍造兵廠(ぞうへいしょう)川越製造所(通称・火工廠(かこうしょう))」の歴史を伝承しようと、文京学院大(同市)の学生たちが「つながる つなぐ つむぐ 火工廠展」を市文化施設ステラ・ウェスト(同市大井中央)で開いている。11日まで。(中里宏)
学生や教員らは「地元の人でも火工廠があったことを知らない人が多い。町の人たちが、軍需工場だった地域を公園や学校など平和な町に変えたことを知ってほしい」と話している。
学生たちが火工廠の歴史を掘り起こすきっかけになったのは、同大まちづくり研究センター(センター長・岩舘豊助教)が2023年10月に開いた火工廠の歴史をたどる町歩き。参加した同大4年(当時2年)の小早川武史さん(21)が「今度は自分たちで町歩き企画をやりたい」と提案し、24年11月、市民も参加した「記憶をつなぐまちあるき」を開催した。
この時に学生が記録した動画を映像作品(約20分)にまとめ、ガイドブックの試作版も製作。6人の学生がかかわる今回の火工廠展では、これらを写真パネルとともに展示している。岩舘さんと小早川さんは今年3月、市立大井小学校で6年生に火工廠についての特別授業も行った。
市民でつくる「『火工廠』語り継ぐ会」の代表で学生たちの調査に協力してきた元中学校長の熊谷洋興さん(83)は、ここ数年、活動の後継者を探すのに苦労してきた。「地域の歴史を学ぶ小学3、4年の副読本から火工廠が消えてしまい、子どもたちも学ぶことができなくなってしまった。歴史を語り継ぐ活動が若い人に広がってくれれば、ありがたい」と話す。
岩舘さんは「戦争に使われた土地を、先人たちが町の発展のために取り戻したことは、誇るべき歴史ではないか」と町の歴史を掘り起こす意義を語る。
最終日の11日午後3時からは学生たちのトークショーが開かれるほか、戦争末期に作られた陶製手りゅう弾や陶製地雷の実物も展示する。
2025年7月9日 東京新聞朝刊 埼玉版
https://www.tokyo-np.co.jp/article/419282