2020.04.20
オンライン授業
負担ずしり
大学生、PCや機材確保 必要
新型コロナウイルスの感染拡大でアルバイトを失い、苦しい状況に立たされている学生が出始めている。一方、休校が続く各地の大学はオンライン授業を予定するが、パソコンを持たない学生がいるなど、十分な学びの環境を整備できていない可能性がある。大学側に現状を知ってもらおうと、学生が大学に要請する動きも出てきた。
日本大法学部三年の女子学生(20)=埼玉県=は「アルバイトが見つからない。お金がないと何もできず、将来も不安になる」と窮状を訴える。
保育士の母と二人暮らし。社会の制度や仕組みなどを広く学ぼうと、自治体の奨学金で進学した。返済は当然だが、「いろいろな経験がしたい」と趣味の競技ダンスや友人との旅費をためるため、アルバイトが欠かせない。授業後、ガールズバーとファストフード店を掛け持ちし、毎月約十万円稼いでいた。
だが、二つのバイトは三月末で契約が終了。今月から新しいバイトを探す予定だったが、コロナ禍でバイト先が見つからず、現状で収入はゼロだ。日大は五月以降、オンライン授業にシフトする予定だが、女子学生は「対面授業でないならば、100%のサービスが受けられていないのと同じ。授業料を減額してもいいのでは」と疑問視する。
早稲田大文化構想学部二年の高橋広野さん(20)も感染防止対策に理解を示すが、「オンライン授業の実現に向けたしわ寄せは学生に来ている」。早大側に改善をしてもらおうと、今月十三日、オンラインで一週間の限定で集めた約百八十人分の署名を携え、大学に提出した。
要請では、オンライン授業で、パソコンやルーターなど必要機材の貸し出しなど五項目を大学側にただし、二十一日までに回答を得るとしている。
高橋さんは「図書館も使えず、自由な学びが妨げられている。大学には一日も早く対応してほしい」と訴える。
早大は本紙の取材に「全学生の接続環境を把握することは難しいため、どのような形でサポート可能か検討しています」とメールで回答した。
立命館大(京都府)は原則として動画配信はせず、ウェブ上で学生に課題を出すなどの方法を採用する。しかし、政府の緊急事態宣言が全国に拡大し、構内でのパソコン貸し出しや無料Wi-Fiが使えるスペースにも立ち入りが禁止されたため、休講措置を取った。授業は来月七日に再開予定だが、担当者は「パソコンがない生徒への対応など包括的に考えなくてはならない」と話す。
◆学生75%が収入減予測 近畿の私大生ら調査
新型コロナウイルス流行で、大学生の多くが経済的苦境に追い込まれそうだとのアンケート結果を、大阪体育大の藤本淳也教授(スポーツマーケティング学)らがまとめた。今月以降、家族の収入減を見込む学生が56%、アルバイト収入が減ると予測する学生は75%に上った。
調査は四月一~七日、近畿地方の大学生を中心に依頼し、千四百六人の回答を分析した。私大生が94%を占めた。
九割の学生が学費の支払いを親に頼っており、国内で感染拡大が始まってから家族の収入が減ったのは35%で、うち「大きく減少した」が6%。四月以降も56%が減少を見込んでおり「大きく減少する可能性がある」としたのは12%。経済的な厳しさが増しそうだ。
また、通常の授業期間中にアルバイトをしている学生は65%。この中で感染拡大以降に収入が減ったのは59%、四月以降に減少を見込む学生は75%に上った。
アルバイト先の感染対策への不安もうかがえた。リスクの上がる「近距離での会話や発声がある」とした学生は92%。対策が適切にされていないとの回答も23%あった。
藤本教授は「大学が再開しても、学生生活に影響が残る可能性が高い。各大学は丁寧な対応が求められる」と話した。
2020年4月20日付 東京新聞