2023.04.06

東日本大震災12年
悲劇伝える紙芝居
県内大学生が翻訳

◆神田外語大と城西国際大の22人/中国語と韓国語に
小学生だった世代 伝承取り組み

 神田外語大(千葉市)と城西国際大(東金市)の学生が今春、宮城県石巻市の東日本大震災被災者遺族と地元大学が共同制作した津波火災の悲劇を伝える紙芝居を、中国語と韓国語に翻訳した動画を完成させた。震災から十一日で十二年。風化が叫ばれる中、当時は小学生だった若い世代が、学びを生かした伝承に取り組んでいる。(中谷秀樹)

 原作の紙芝居は「忘れないよ 小さな命と あの日のこと」。昨年三月に完成した。石巻市の日和(ひより)幼稚園の送迎バスが地震直後に高台の園舎から海側に向かい、乗っていた園児五人が津波火災で命を落とした実話をもとに、宮城学院女子大(仙台市)の保育士志望の学生らが保育防災学習の一環で制作した。この園に通う娘の愛梨ちゃん=当時(6つ)=を亡くし、遺族有志の会で語り部活動を続ける佐藤美香さんから当時の話を聴き取った。

 紙芝居の内容や絵の評価は高く、より多くの人に知ってもらおうと多言語化のプロジェクトが浮上。教員間の親交がある県内二大学の学生も参加、昨年四月から翻訳版制作が始まった。

 神田外大から参加の十三人は中国語を担当。外国語学部四年の岩間功祐さん(23)は市原市出身で、震災時は小学五年生。「(地震後に市内で発生した)石油コンビナート爆発火災で自宅から炎が見え、かなり怖かった。佐藤さんの『命の犠牲の上に成り立つ教訓はあってはならない』という言葉が重く、遺族の思いが伝わる翻訳を目指した」と話す。

 岩間さんによると、原作のせりふの一つ「おうちの人は、子どもたちの焼けてしまったクレヨンや上靴を大事に大事に抱えました」を訳す際、当初は「大事に」の部分に「慎重に」という意味の中国語を当てていた。

 日本語と意味が100%重なる単語はない。とはいえ、大きくずれる語を持ってきて、原作の印象を損ねてはいけない。学生間で慎重に討論し、最終的には「心から惜しむ」という意味の言葉に置き換えた。そんな修正を一つ一つ重ねていった。

 城西国際大は九人で韓国語に翻訳。昨年九月、丁寧で忠実な翻訳を求めようと、他の二大学ともに一泊二日で、津波で児童七十四人、教職員十人が犠牲となった石巻市立大川小学校などを視察した。国際人文学部三年の二ツ森由利加さん(21)は「被災地を見ることに抵抗があり、一度は断った。でも、自分の目で確かめることがプロジェクトの意味と気付き、現地に行く決心をした」と語る。

 宮城学院女子大は、阪神・淡路大震災で多くの在日外国人が被害を受けたことを教訓に考案された「やさしい日本語」のバージョンを作った。主語で始まる基本的文法に努め、日本文学科三年の鈴木茅優(ちひろ)さん(21)は「津波が擬人化されている部分や擬音語の扱いに頭を悩ませた」と振り返る。

 紙芝居動画に翻訳した各言語のアフレコを入れ、二月中旬に完成。各校の学生が石巻市を訪れ、遺族代表者に寄贈した。岩間さんは「震災の年に生まれた子が小学五、六年生。あの日を知らない人が増えてくる。世界も含めて語り継いでいく大切さを感じた」と語り、今後、文化祭などでの上映会開催を検討している。

2023年3月11日 東京新聞朝刊千葉県版

https://www.tokyo-np.co.jp/article/237408