2023.04.06
給食無償化
国は推進を
◆福嶋尚子・千葉工大准教授に聞く
自治体間格差 財源なくても工夫の余地
小中学校の給食無償化を打ち出す自治体が全国で相次いでいる。保護者の経済的な負担軽減や、児童らの健全育成が目的だ。一方で、財政難などから無償化に踏み切らない自治体も多い。十八日には習志野市で給食無償化の学習会が開かれ、福嶋尚子・千葉工業大准教授(教育行政学)が講師を務める。福嶋准教授に無償化の意義などを聞いた。(保母哲)
給食無償化が最近話題になるのは、コロナ禍が大きい。子どもも学校も多くの影響を受け、学んだ一つが「給食って大事なんだ」ということ。全国一斉休校になり、子どもたちが家に閉じ込められ、栄養バランスのある食事をとれなくなってしまった。その結果、栄養の偏りや虐待の増加などが問題視され、食が満たされない子どもたちが見えてきた。
そこに襲ってきたのが物価高騰。もともとダメージを受けていた家計に追い打ちとなった。そこで給食費の無償化を打ち出す自治体が出てきたものの、問題は自治体間の格差。小中学校の完全無償化のほか、小学校だけ、中学校だけとか、第二子、第三子以降のみとかの自治体もある。
自治体によって差があるのは望ましくなく、国が全国一律で無償化に取り組むべきです。無償化のメリットは多く、まず子どもたちの生存権が満たされること。自治体によって第一子、第二子だけとかで差をつけるのではなく、誰もが無償。これが当たり前の学校でしょう。
無償化は「義務教育だから」という考え方があるが、「義務教育に給食が入るか」といった意見もある。子どもたちは朝八時過ぎごろから午後遅くまで学校にいるんだから、給食を出すのが当たり前だと思います。トイレを無償で使えることや、体調が悪いと保健室に行き、診療代を必要としないのと同じ。
自治体側からは「財政難で無償化は難しい」という声をよく聞く。しかし、どの自治体も予算の1~2%くらいを充てるだけで無償化できる。無償化すれば、給食費を徴収している教職員や自治体職員の事務コスト軽減にもつながる。
就学援助制度により、家計が苦しい子どものうち三割くらいが、給食費が無償とされている。児童手当も支給され、このお金を、保護者の同意により給食費に振り向けることも考えられる。財源がなくても、現在の方法を変えるなど自治体にも工夫できることは多い。いろんな方法を模索してほしい。
学校給食法にも問題がある。まず、給食の提供が努力義務にとどめられていること。もう一つは、食材料費は保護者負担としていること。早急に改正し、子どもたちのために国が一日一食くらいは保証するようにしてほしい。家計が苦しい家庭の安心にもつながります。
◆就学援助制度
公立の小中学校に就学している児童らで、経済的理由から給食費や学用品費などの支払いが困難な場合、一部を援助する制度。
◆学校給食法の規定
第4条で「給食が実施されるように努めなければならない」、第11条2項で「経費は児童又は生徒の保護者の負担とする」と定めている。このため食材料費は保護者負担とする自治体が多いものの、自治体による補助の禁止を規定する趣旨ではないと解釈されている。
2023年3月16日 東京新聞朝刊千葉県版