2023.04.06

給付型奨学金
年収600万円に

◆子ども3人以上・理工農系対象
 修学支援制度拡充

 文部科学省は四日、低所得世帯の大学生らに対する高等教育修学支援制度の二〇二四年度からの改正点を公表した。返済不要の給付型奨学金と授業料減免の対象となる世帯年収を約三百八十万円以下から拡充し、子ども三人以上の多子世帯と私立校の理工農系学生は約六百万円以下にする。中間層の多子世帯十万人と理工農系十万人の計二十万人が新たな対象になると想定している。
 現行制度は、年収約二百七十万円以下は授業料が大幅免除となるなど所得に応じて段階的に支援額が変わる。改正で年収約三百八十万~約六百万円のグループを新たに設定し、多子世帯は満額の四分の一程度(私大生で最大約四十万円)を支援。理工農系は、私立文系の平均授業料との差額を支援する方向で、年三十万円前後と見込んでいる。

 また、大学院在学中は授業料を徴収せずに修了後の所得に応じて分割納付する「後払い」の新制度についても、基準となる所得水準を公表した。導入は二四年秋で、納付が始まる本人年収を原則約三百万円に設定。扶養する子どもが二人いれば約四百万円に緩和するなど子育て世帯に配慮する。低所得でも修了後に月二千円前後の支払いを求める。

 大卒後の貸与型奨学金返済の仕組みも変更し、返済期間を長くして毎月分を減らす制度について、申請可能な本人年収を三百二十五万円以下から四百万円以下に緩和する。

 政府は三月三十一日に「次元の異なる少子化対策」のたたき台となる試案を公表し、こうした方針を盛り込んでいた。学費負担や奨学金返済が少子化の大きな要因の一つとみており、さらなる支援の強化に向けて見直しを続けるとも表明している。

◆修学支援制度
 低所得世帯の子どもが大学や専門学校などの高等教育機関に進学するのを後押しするため、入学金と授業料の減免と、返済不要の給付型奨学金の支給をセットで実施する国の制度。2020年度に始まり、21年度は前年度より約4万8000人多い約31万9000人が利用した。現行では住民税非課税世帯か、それに準じる世帯が対象で、世帯年収の増加に応じて支援金額は段階的に減少する。

2023年4月5日 東京新聞朝刊

https://www.tokyo-np.co.jp/article/242002