2023.04.10

文化学園大
福祉施設に1100枚寄贈

◆「ガウンの種」コロナ禍教訓に花開く
 杉並の縫製会社と連携

 服作りを学ぶ文化学園大学(渋谷区)の学生たちが、得意とする「縫う」ことで社会貢献に取り組んでいる。手がけたのは、福祉施設で食事などを介助する人も、介助される人も着用できる「マルチガウン」。一~四年の約八百人が作業工程を分担して千百着を仕上げた。三月中旬ごろまでに希望する施設に届ける。(石川修巳)

 きっかけは昨年二月十日、本紙夕刊一面に掲載された記事だった。世界的なファッションショーにも携わる杉並区の縫製会社「ファッションしらいし」が、ガウンの不足した新型コロナ禍を教訓に、被服科のある全国の高校にガウンの生地や型紙を郵送し、「ガウンの種」と名付けて万一に備えて製作を呼びかけていた。

 「服作りのプロを目指す学生たちにも担い手になってほしくて」と大橋寛子准教授。賛同を伝えると、同社から材料の不織布をすべて提供してもらえることになったという。

 ファッションクリエイション学科の学生たちが全員で、生地の裁断や縫製、検品などの工程を分担した。ラミネート加工のため、食べこぼしも拭き取れる。都社会福祉協議会が運営する「東京善意銀行」を通じて希望を募り、第一弾の七百枚分は先月、特別養護老人ホームなど都内三十九施設に寄贈した。残る四百枚分は三月中旬に発送する。

 三年の安達朱音(あかね)さんは「誰かのために服作りをするのは初めて。着る方のことを考え、きれいに丁寧に縫いたいという思いで参加しました」と振り返る。大橋准教授は「『縫う』ことが社会に役立つことを学生自身が感じていた。来年もやりたい」と語った。

 ファッションしらいし代表の白石正裕さんは「とてもありがたい。より多くの方々に『ガウンの種』を広めたい」と話している。

2023年2月19日 東京新聞朝刊都心版・下町版・山手版

https://www.tokyo-np.co.jp/article/232021