2023.07.07

多様性を支える2大学
教育・研究組織を設立
横浜国立大とフェリス女学院大

 県内の大学が本年度、「多様性」をテーマにした教育・研究組織を相次いで設立している。横浜国立大(横浜市保土ケ谷区)では、障害のある子どもの学校教育を支援する「D&I教育研究実践センター」、フェリス女学院大(同市泉区)は、性を巡る多様な価値観を学び、キャリア形成に生かしてもらう「ジェンダースタディーズセンター」を設けた。(志村彰太)

◆横浜国立大 付属小中 障害特性 専門職派遣へ

 横浜国立大の「D&I」はダイバーシティー(多様性)と、インクルージョン(包摂)の略。特別支援(特支)教育が専門の泉真由子副学長をセンター長に、特支学校の教員免許などを持つスタッフら計七人態勢で四月に発足した。スタッフは二人増員予定という。

 来年度から障害のある児童・生徒を受け入れる同大付属小中学校に、スタッフを「専門職支援員チーム」として派遣し、障害特性に合わせた教育活動を支援する。効果検証と改善を重ねて教育実践の「モデル」を構築し、三年後をめどに専門職支援員の養成課程を創設して知見の全国的な普及を目指す。

 支援に入った学級の子どもを長期的に追跡調査し、障害の有無にかかわらず、教育効果が子どもの将来にもたらす影響を検証。泉副学長は「三十年単位のプロジェクトだ」と話す。

 一九三八年の建築で国登録有形文化財の付属中(同市南区)は、建物の保全とバリアフリー対応の両立が求められる。センターでは、費用と外観の変更を抑えた工法も開発する。

 センター創設のきっかけは二〇一八年。泉副学長のゼミに、障害のある双子が在籍する横浜市立中から支援の要請があり、学習と学校行事の支援に入った。「さらに専門性を高め、体系化したい」とアイデアを温めていたという。泉副学長は「障害の有無に関係なく人生の選択肢を保障し、多様な価値観に触れる機会をつくりたい」と語った。

◆フェリス女学院大 副専攻 女性のキャリア形成に

 一方、フェリス女学院大は四月、国際交流学部の金香男(キムヒャンナム)教授(家族社会学)をトップに、ジェンダースタディーズセンターを設置。各学科のジェンダーに関する授業をひとまとめにした「ジェンダーとキャリア」という副専攻(二十五単位)を創設した。

 この副専攻では、法律や文学、音楽、芸術など多様な切り口からジェンダー論を教え、性差の固定観念を超えてリーダーシップを発揮する女性の輩出を目指す。授業外で、性に関する疑問や社会的課題を議論する「ジェンダーカフェ」も開き、問題解決能力を育む。

 十五人程度の学生スタッフがイベントを計画するなど、外部への発信にも力を入れる。直近では、十七日午後一時から、同大の山手キャンパス(同市中区)で「ジェンダーでクラシック音楽を考える」と題した対談と演奏会を開く。入場無料で、事前予約制。詳細は同大のホームページか、企画・広報課=電045(812)9624=で。

 金教授は「女性がキャリア形成していくにあたり、労働市場などではまだ固定観念が崩れていない。社会に出る前に知っておいた方が良いことがあり、副専攻として体系化した」と話す。将来的には、対応する分野を広げて「ダイバーシティー・インクルージョンセンター」にしたいという。

2023年6月14日 東京新聞朝刊横神版・川崎版

https://www.tokyo-np.co.jp/article/256512