2024.07.18
クルド人と共生へ学生交流
熊谷の立正大でセミナー
悩み相談や民族衣装紹介
川口市など一帯で暮らすクルド人と、熊谷市にある立正大の学生が交流する多文化共生セミナーが15日、同大熊谷キャンパスで初めて開催され、クルド人が学生に日頃の悩みを打ち明けた。参加した日本クルド文化協会(川口市)のワッカス・チョーラク事務局長によると、県内の大学で学生とクルド人の交流会が開かれるのは初めて。(菅原洋)
「日本人にクルド人が抱える問題などを相談すると『ここは日本だから』という答えを何度か聞いた。この言葉は悲しい」。セミナー後半のフリートーク。クルド人男性が学生の前で訴えた。
子どもを持つ2人の女性は「市役所から子どもの入学手続きなどの書類が届かず、親が自ら動かなければならない」「子どもの保育費を払う金融口座が作れないなど、毎日の生活に疲れてしまう」と日本人との違いを強調した。
3年の岩田明日香さんは「子育てに力を入れる日本で、クルド人の子どもに関わる手続きが難しく、将来の進学も閉ざされるとしたら、いけない。話を直接聞け、現状がひどいと分かった」と実感を込めた。
クルド人はトルコやイラク、イランの山岳地帯を中心に国家を持たずに暮らし、周辺国から迫害を受ける人々。川口、蕨市に約2千人いるという。
セミナーは同大社会福祉学部の芝田英昭教授(社会保障論)が企画し、同教授のゼミと、ゼミ生らでつくる立正クルド研究会が主催。1~3年生とクルド人家族が各約20人参加した。フリートークに先立ち、日本人とクルド人の民族衣装をお互いが紹介し、子どもを含むクルド人たちが浴衣を試着した。
チョーラク事務局長は「日本人のクルド人に対する不安な気持ちも理解するが、差別は許されない。日本人と共生したいという気持ちを分かってほしい。このような時期に、次世代との交流は大事だ」と企画を評価した。
芝田教授は「今月10日から改正入管難民法が施行され、難民申請が3回目以上で強制送還が可能になった。大きな日本の過ちだ」と指摘した。セミナーは今後も3カ月おきに開く予定。
2024年6月21日 東京新聞朝刊埼玉版