2020.04.24
金大が来年4月新設
文理融合の「先導科学類」
金沢大は二〇二一年四月、文系と理系の垣根を取り払って学際的に学ぶ「先導科学類」を新設する。グローバル化やデジタル化などで社会問題が複雑化するなか、多角的にアプローチするためのカリキュラムを用意する。起業家や技術開発者、自治体などで制度設計を担う職員ら、さまざまな分野で問題を解決するリーダーを育てる。
金沢大には現在、法学や経済学を学ぶ文系、機械工学、物質化学などの理工系、医学、薬学などの生命系の三学域がある。先導科学類は新設する融合学域に属し、既存の三学域の学問を幅広く学ぶことができる。
募集人数は五十五人で、今秋以降に推薦入試、来年二月に一般入試で学生を募る予定。特定の教科に比重を置く傾斜配点を用い、文系科目が得意な人も理系科目が得意な人も、入学しやすくする。社会人や外国人を対象にした推薦入試も行い、多様な学生を集める。
新入生を二つのグループに分け、それぞれを受け持つ教員が学生の相談などに対応。学年が上がるにつれて担当教員の数を増やし、個々の学びを手厚く支える方針。
一年目は食料や人口減少、人種、環境、都市一極集中など社会問題を幅広く学ぶ。学生はそれぞれ興味のあるテーマを選び、どのような手法で解決するかを考える。その考えに沿って二年次以降の学習計画を立てて必要な知識を身に付け、調査や研究を重ねる。
先導科学類という名前には、文理融合の知識を基に社会や人、技術をリードするという意味を込めた。新設を立案した山崎光悦学長(68)は「社会を変革する人材を育てたい」と話している。
世界と渡り合える人材 育つと確信
山崎学長 狙いは
先導科学類の新設の狙いを山崎学長に聞いた。
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人口減少、経済活動の停滞、国際競争力の低下…。日本はさまざまな問題を抱えている。この難局を乗り越えるには、一人一人が独創的な発想で考え、行動することが必要になる。
日本が開発した多くの技術がスマートフォンには使われている。だが、日本の技術者はどの技術をどう戦略的に世界に売り込むかという視点に欠けており、結果として米国や韓国、中国のメーカーにシェアを奪われている。これでは、日本の国際競争力は低下するばかりだ。
だからこそ、理系の学生にも、文系の学生が担ってきた販売戦略というマインドを学んでほしい。逆に文系の学生には、理系の学生が学ぶ科学にも強くなってほしい。そうすることで、総合的な視点から新ビジネスを創造し、世界と渡り合える人材が育つと確信している。
やまざき・こうえつ 1951年、富山県小矢部市生まれ。金沢大工学部卒、同大大学院工学研究科修士課程修了。同大工学部教授などを経て、2014年4月から現職。
2020年4月23日付 中日新聞